交渉術のきほん

【初心者向け】ビジネス交渉で会話の流れを味方につける基本

Tags: 交渉術, 会話術, コミュニケーション, 初心者向け, ビジネススキル

ビジネス交渉において、「なんだか相手のペースに乗せられてしまった」「話があちこちに飛んで、結局何が決まったのか曖昧だ」と感じた経験はありませんか。特に交渉経験が少ないうちは、会話の流れに身を任せてしまい、自分の意図が十分に伝えられなかったり、不利な条件を飲んでしまったりすることがあります。

しかし、会話の流れを意識し、少しだけコントロールするコツを知っていれば、交渉を自分の味方につけることができます。これは、一方的に話し続けることや、相手を言い負かすこととは異なります。双方向のコミュニケーションの中で、建設的に合意形成を目指すために、会話をナビゲートするイメージです。

この記事では、ビジネス交渉で会話の流れを味方につけるための基本的な考え方と、すぐに実践できる具体的なステップをご紹介します。自信がないと感じている方でも、小さなことから始められる内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

なぜ会話の流れを味方につける必要があるのか

交渉の目的は、自分と相手の双方にとって納得のいく合意点を見つけることです。そのプロセスでは、情報交換、お互いの要望の提示、落としどころの模索など、様々な会話が交わされます。

この会話の流れを意識せずに進めると、以下のような問題が起こりやすくなります。

会話の流れを味方につけることは、これらの問題を避け、交渉を円滑かつ建設的に進めるために非常に有効なスキルです。

会話の流れを「味方につける」とは?

「会話の流れを味方につける」と言うと、難しく感じるかもしれません。これは、会話の全てを支配するという意味ではなく、以下の点を意識しながらコミュニケーションを進めるということです。

  1. 目的・ゴールを常に意識する: 今、何のために話しているのか、最終的にどうなりたいのかを明確に持つ。
  2. 現在地を把握する: 会話がどの段階にあり、次に何を話すべきか(あるいは話すべきでないか)を理解する。
  3. 意図をもって質問・発言する: ただ反応するだけでなく、自分の知りたい情報や伝えたいメッセージのために言葉を選ぶ。
  4. 相手に寄り添いつつ、適切に軌道修正する: 相手の意見や状況を尊重しつつも、話が逸れたら目的へ戻すように促す。

これは、交渉の主導権を一方的に握るというよりも、対話の舵取りを意識する、と言い換えることができます。

会話の流れを味方につけるための基本的なステップ

それでは、具体的にどのような行動を意識すれば良いのでしょうか。ここでは、明日からでも試せる基本的なステップをご紹介します。

ステップ1:アジェンダ(話す内容のリスト)を準備し、共有する

交渉を始める前に、「今日はこの3つの点について話し合えればと考えております」のように、大まかなアジェンダや「今日ここでお互いに決めたいこと」を準備し、可能であれば相手と共有することをおすすめします。

<実践ポイント>

これにより、お互いに「今日はこれを話す時間だ」という共通認識を持つことができ、話が脱線しそうになったときも自然にアジェンダに戻りやすくなります。

ステップ2:効果的な「質問」を使い分ける

質問は、会話の流れを自分で作る最も基本的なツールです。質問をすることで、相手から必要な情報を引き出し、同時に自分が次に話す内容への布石を打つことができます。

<実践ポイント>

ただ一方的に説明するのではなく、質問を挟むことで、会話の流れを自分から相手、そしてまた自分へとコントロールすることができます。

ステップ3:相手の言葉にしっかりと「耳を傾ける」

会話の流れを味方につけることは、自分が話すだけでなく、相手の話をきちんと聞くことでも実現できます。相手が何を重要視しているのか、どのような懸念を持っているのかを正確に理解することで、次に自分がどのようにアプローチすべきかが見えてきます。

<実践ポイント>

相手が話し終えた後に、「〜ということですね」と簡単に要約したり、「〇〇についてもう少し詳しくお伺いできますか?」と質問したりすることで、相手は「自分の話を理解してくれた」と感じ、より安心して情報を提供してくれるようになります。これは、会話の流れを自分にとって有利な方向へ導く上で非常に重要です。

ステップ4:要約と確認で共通認識を作る

会話が一定の区切りについたときや、重要な決定をする前に、「これまでの話をまとめると、〇〇については〜、△△については〜、という認識でよろしいでしょうか?」のように、これまでの会話内容や合意事項を要約して相手に確認を求めましょう。

<実践ポイント>

要約と確認は、認識のずれを防ぐだけでなく、会話のペースを調整し、次の話題へスムーズに移行するための有効な方法です。特に、複雑な条件交渉や複数の議題がある場合に役立ちます。

ステップ5:適度な「間」を活用する

会話における「間」は、単なる沈黙ではありません。適切に使うことで、相手に考える時間を与えたり、自分の発言の重要性を強調したり、相手からの反応を引き出したりすることができます。

<実践ポイント>

間を恐れず、意識的に活用することで、会話のペースをコントロールし、相手の本音や考えを引き出しやすくなります。

具体的なシーンでの応用例

営業シーン:顧客との価格交渉

顧客から「もう少し安くならない?」と言われたとき。

社内調整:他部署への依頼

他部署に協力を依頼したが、すぐに難色を示されたとき。

自信がないと感じている方へ

「会話の流れをコントロールするなんて、自信がない自分には無理だ」と感じる必要はありません。ご紹介したステップは、どれも特別な話術や才能が必要なものではありません。

これらの小さなステップを意識するだけでも、会話が予期せぬ方向に流れていくのを防ぎ、自分の意図を反映させやすくなります。すぐに全てがうまくいくわけではありませんが、意識して実践を続けることで、徐々に交渉の会話を自分の味方につけられるようになります。その小さな成功体験が、必ず自信につながっていくはずです。

まとめ

ビジネス交渉において、会話の流れを味方につけることは、交渉を円滑に進め、望む結果に近づくために重要なスキルです。これは、一方的な主導権を握ることではなく、対話の目的を意識し、適切なナビゲーションを行うことを指します。

会話の流れを味方につけるための基本的なステップは以下の通りです。

  1. アジェンダを準備し、共有する
  2. 効果的な「質問」を使い分ける
  3. 相手の言葉にしっかりと「耳を傾ける」
  4. 要約と確認で共通認識を作る
  5. 適度な「間」を活用する

これらのステップは、どれもすぐに実践できるものです。交渉経験が少なく自信がないと感じている方も、まずはできることから一つずつ試してみてください。会話の流れを意識し、小さな行動を積み重ねることで、きっと交渉が今よりもっとスムーズに、そして自信を持って臨めるようになるはずです。