ビジネス交渉『曖昧な返答』をチャンスに変える!対応の基本とコツ
ビジネス交渉の場面で、相手から「ええ、いいですね。持ち帰って検討します」「少し考えさせてください」といった、その場ではっきりしない『曖昧な返答』をもらい、その後の進め方に困った経験はありませんか?
特に、営業の経験が浅い方や、自信が持てないうちは、このような返答を受けると「脈がないのかな」「どうすればいいんだろう」と不安になってしまうかもしれません。
しかし、こうした曖昧な返答は、必ずしもネガティブなサインとは限りません。多くの場合、相手は真剣に検討しようとしていたり、あなたには見えない社内プロセスがあったりするからです。
この記事では、ビジネス交渉で曖昧な返答を受けた際の、基本的な考え方と具体的な対応方法について、初心者の方にも分かりやすく解説します。これを読めば、曖昧な返答に慌てず、次に繋げるための道筋が見えてくるはずです。
なぜ相手は曖昧な返答をするのか?考えられる理由
相手がすぐにYESやNOを言わず、曖昧な返答をすることには、いくつかの理由が考えられます。その理由を理解することが、適切な対応への第一歩です。
- 情報がまだ不十分: 提案内容について、まだ疑問点や不明な点があり、判断に必要な情報が揃っていない可能性があります。
- 複数の選択肢を比較検討したい: あなたの提案だけでなく、他の選択肢(他社サービスや現状維持など)と比較検討したいと考えているかもしれません。
- 社内での検討や承認が必要: 決定権が相手個人になく、上司や関係部署との協議、社内稟議などのプロセスが必要な場合があります。
- 懸念や不安がある: 価格、条件、導入後のサポートなど、提案内容に対して具体的な懸念や不安があるが、その場で伝えるのをためらっていることも考えられます。
- 単にその場で決められない・考えたい: 十分に理解はしたが、感情的な要素も含め、一人でじっくりと考えたり、時間を置いたりしたいという純粋な理由の場合もあります。
- (可能性は低いが)その場で断りにくい: あなたとの関係性や場の雰囲気を考慮し、直接的なNOを避けている可能性もゼロではありません。
これらの理由のうち、どれが当てはまるのか、あるいは複数当てはまるのかを推測することが重要です。
曖昧な返答を受けた際の基本的な心構え
曖昧な返答を受けたとしても、必要以上に落ち込んだり、焦ったりする必要はありません。大切なのは、冷静に状況を分析し、次に繋げるためのアクションを考えることです。
- 感謝と理解を示す: まずは「ご検討いただきありがとうございます」など、相手の検討姿勢に感謝を伝え、返答を「持ち帰る」「考える」という相手の意向を尊重する姿勢を示しましょう。
- 理由を探る質問を考える: なぜすぐに決められないのか、その理由を明らかにするための質問を準備します。ただし、相手を問い詰めるような口調にならないように注意が必要です。
- 次のアクションを明確にする: 相手が検討した後、どのような形で、いつまでに返答をもらえるのか、あるいは次に何をすれば良いのかを具体的に確認します。
曖昧な返答をチャンスに変える!具体的な対応ステップと会話例
それでは、具体的な対応ステップと会話例を見ていきましょう。
ステップ1:感謝を伝え、相手の意向を受け入れる
まず、相手が検討する時間を取りたいという意向を尊重する姿勢を示します。
会話例: あなた:「ありがとうございます。ご検討いただけるとのこと、大変ありがたいです。」 あなた:「はい、承知いたしました。ぜひ、じっくりとご検討ください。」
NG例: あなた:「え、今決められないんですか?何か問題でも?」 あなた:「考えてもらう前に、ここで決めちゃいませんか?」 (→相手にプレッシャーを与えたり、不快感を与えたりする可能性があります。)
ステップ2:曖昧な返答の「理由」を探る質問をする
感謝を伝えた後、なぜ検討が必要なのか、その理由を明らかにするための質問を投げかけます。これにより、相手が抱える懸念や、検討に必要な情報、社内プロセスなどを把握することができます。
理由を探る質問例: * 「差し支えなければ、どのような点について主に検討されるか、お聞かせいただけますでしょうか?」 * 「〇〇様(社内の関係者)とご相談されるとのことでしたが、特に確認しておきたい点などはございますか?」 * 「もし、何か判断に迷われる点や、懸念されている点などがございましたら、この場でご説明できますので、遠慮なくおっしゃってください。」 * 「今回の提案について、何か情報として不足している部分はございますでしょうか?もしございましたら、追加で提供させていただきます。」 * 「貴社の決定プロセスで、次にどのようなステップが必要になりますか?(例:稟議、〇〇部署との調整など)」
NG例: あなた:「なんで決められないんですか?」 あなた:「何か不満があるんですよね?」 (→相手を責めるようなニュアンスは避け、あくまで協力的な姿勢で質問します。)
ステップ3:検討に必要な情報提供を申し出る
ステップ2で得られた情報をもとに、相手の検討を後押しするために、不足している情報の提供や、疑問点の解消を申し出ます。
会話例: あなた:「もし、先ほどの〇〇の件で、具体的な資料や事例などが必要でしたら、改めてご準備いたしますが、いかがでしょうか?」 あなた:「〇〇様へのご説明にあたり、もし私に何かお手伝いできることがございましたら、遠慮なくお申し付けください。」 あなた:「製品デモの追加リクエストや、技術的な詳細についてのご質問などございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。」
ステップ4:次のアクション(ネクストステップ)を明確に合意する
これが最も重要なステップです。曖昧な返答で終わらせず、「検討後、どうなるのか」「次に何を、いつまでにするのか」を具体的に決めます。これにより、交渉が止まることを防ぎ、次に繋げることができます。
ネクストステップの合意例: * 返答期限の確認: * 「ご検討の結果について、いつ頃までにご連絡いただけますでしょうか? 来週の〇曜日はいかがでしょうか?」 * 「社内でのご相談とのこと、承知いたしました。大体いつ頃、〇〇様(関係者)と話されるご予定でしょうか? その後、改めて私から進捗についてご連絡してもよろしいでしょうか?」 * 次回の打ち合わせ設定: * 「もしよろしければ、ご検討いただいた後、改めてご質問にお答えする機会として、来週どこかでお時間をいただけないでしょうか? 例えば、〇曜日の午前中はいかがでしょうか?」 * 「〇〇様(関係者)にも内容をご説明できるよう、次回は一緒に打ち合わせに参加していただくことは可能でしょうか?もしよろしければ、皆様のご都合の良い日時をいくつか教えていただけますでしょうか?」 * こちらからの情報提供・フォロー: * 「それでは、来週の〇曜日までに、ご検討いただく上で参考になるであろう追加資料をメールで送付させていただきます。ご不明点がありましたら、いつでもご連絡ください。」 * 「ご提案内容に関するよくあるご質問と回答をまとめたリストを別途お送りしておきます。ご参考になれば幸いです。」
NG例: あなた:「じゃあ、また連絡します。」(→具体性がなく、相手からの連絡をただ待つだけになってしまいます。) あなた:「検討しておいてくださいね!」(→相手任せで、次につながるアクションが明確になりません。)
ポイント: ネクストステップを決める際は、「いつ」「誰が」「何を」「どうする」を具体的にすることが重要です。これにより、双方にとって次のアクションが明確になり、交渉が宙ぶらりんになることを防ぐことができます。
曖昧な返答を減らすための日頃からの工夫
曖昧な返答を受けてからの対応も大切ですが、こうした状況を減らすために、交渉前からできることもあります。
- 十分な情報収集: 相手の会社や担当者の状況、抱えている課題、決定プロセスなどを事前にしっかりと調査しておくことで、交渉中の予測不能な事態を減らせます。
- 信頼関係の構築: 普段から良好な関係を築けていれば、相手も本音で話しやすくなり、懸念や不明点をその場で伝えてくれる可能性が高まります。
- 分かりやすい説明: 専門用語を避け、相手にとって理解しやすい言葉で、提案の「価値」を明確に伝えることで、情報不足による検討の必要性を減らせます。
- 期待値の調整: 交渉の初期段階で、意思決定のプロセスやスケジュール感について、さりげなく確認しておくことも有効です。
まとめ:曖昧な返答は『次へのサイン』と捉えよう
ビジネス交渉における曖昧な返答は、決して終わりを意味するものではありません。むしろ、相手が提案に対して真剣に向き合っており、「さらに検討が必要な段階である」という『次へのサイン』と捉えることができます。
重要なのは、そのサインを見逃さず、慌てずに以下の基本ステップで対応することです。
- まずは感謝と理解を示す。
- なぜ検討が必要なのか、理由を探る質問をする。
- 検討を助ける情報提供を申し出る。
- 次に「いつ」「何を」「どうする」のか、具体的なネクストステップを合意する。
特に、ネクストステップを明確にすることは、あなたが交渉のコントロールを失わないために非常に大切です。「考えておきます」で終わらせず、「では、〇〇について、来週〇曜日までにご確認いただけますでしょうか?」「その結果について、来週〇曜日にお電話で短時間伺ってもよろしいでしょうか?」のように、具体的な提案をしてみましょう。
自信がないと感じていても大丈夫です。今回ご紹介したステップと会話例を参考に、一つずつ実践してみてください。曖昧な返答を恐れず、冷静に対応することで、きっと次のチャンスに繋げることができるはずです。応援しています。